看護師が小児科に転職する為のQ&Aまとめ
「子どもが大好き!」
子ども好きなら一度は考えたことがある小児科の世界。
小児科が第一希望!と意気込む看護師も多いでしょう。
しかーし!
小児科の看護師に憧れこのページにやってきたあなた!
成人が通う一般内科との違い、上手く説明できますか?
「実習で行ったけどもう曖昧……」
「将来潰れちゃうのが心配……」
「給料は安いのかな……?」
意外と分からないことだらけですよね。
そんな実はよく分からない小児科の世界。
今回は小児科歴20年ベテラン看護師の私が皆さんの疑問に余すところなくお答えします!
小児科の裏側や実態はこれを見れば完璧!
「小児科ってどんなところ?」
小児科は子どもの病気を治すところです!
……そんなこと分かってますよねすみません(笑)
ちゃんと説明しますね。
小児科は0~15歳までの年齢の子どもたちが主な患者さんとなります!
そして15歳までなら内科に関するほぼすべての疾患や感染症を扱います。
親御さんも子どものことで困ったらまず小児科に来るというように、子どもの病気の相談窓口的な役割も担っていますね。
「なんで15歳までなの?」
15歳を過ぎるころには大人と変わらない体になるからです。
市販の薬も15歳を基準に大人と同じ量が飲めるようになりますよね。
子どもは臓器も未発達で、免疫力も低く感染症に対する抵抗力もありません。
また大人と比べ体の大きさも様々です。
なので大人と違った専門的な治療法で、臨機応変な対応が求められるんですね。
「一般科との違いは?」
医学界には「子どもは小さな大人ではない」という格言があります。
知らなかった人はちゃんとメモを取りましょう!(ドヤ顔)
……嘘です。そこまでしなくていいです。
要は体が小さいからといって単純に処方を大人の半分にすればよいというわけではないってことですね。
子どもと大人は体の仕組みも違えば、よくかかる病気も精神性も異なります
従って治療法も診察の仕方も、患児に対する話しかけ方も内科のそれとは全く違ってきます。
「仕事は大変?」
仕事は大変です!
いや、超大変です!(笑)
何より相手は子どもたち、診療自体も人一倍時間も手間もかかります。
泣きます!暴れます!叫びます!
そして子どもは大人に比べて急変リスクも高く、勤務中は一時たりとも気は抜けません。
扱う疾患の種類も多いですし、入院の場合は更に夜泣きやミルクなどの対応も仕事に含まれます。
また親御さんへの配慮といった他の科では無い気苦労もあります。
「残業は多い?」
残業は多いです!
診療時間ギリギリに飛び込んで来ることも多いですし、子どもは何故か夕方に熱が出ることが多いです。
ちなみにその理由はまだ解明されていないらしいです……謎だ。
親という生き物は自分の病気なら翌朝まで我慢出来ても、大切なわが子のことだと居ても立っても居られなくなるものです。
夕方の待合室は、わが子を抱え来院したお母さんでいつも溢れかえっています。
特にインフルエンザが流行る冬場は患者さんが急増します。
クリニックでも帰りが21時過ぎるという看護師も珍しくありません。
「夜勤は多い?大変?」
夜勤は他の科とあまり変わらないです。
しかし、NICUやPICUの場合は72時間ルールの適用外なのでその分夜勤に多く入ることができます。
仕事としては通常の看護に加え患児の夜泣きへの対応、数時間置きにミルクをあげたり……。
その分人員は割かれていても、いつも忙しいです。
「小児科にはどんな種類があるの?」
小児科には大きく分けて4つの種類があります。
それはクリニック、小児病棟、NICU(及びPICU)、GCUです。
簡単に一つずつ説明しますね。
対象:比較的症状の軽い子ども。
扱う疾患:入院設備が無く通院となる為、基本的には症状の軽い疾患。仕事内容は風邪の診療から健康診断、予防接種など様々。
特徴:最近は親御さんの仕事などの都合を考慮し、夕方遅くまで診療しその分お昼休みを長くとる病院も増えています。
対象:主に入院が必要となる子ども。
扱う疾患:とても幅広く、骨折などの怪我、急性疾患、慢性疾患問わず様々です。
特徴:食事の介助やおむつ交換などは付き添いの親御さんがしてくれることもあります。また乳幼児に対しては発育状態のチェックも大事な仕事の一つです。
対象:生まれて4週間以内の新生児。命に関わる重篤な患児の為の集中治療室です。
扱う疾患:主に未熟児や先天性疾患などの重病。
特徴:普通の小児科には無い高度な設備を備え、24時間体制で重篤な患児を治療します。急変リスクが非常に高く、対応する医師や看護師にもとても高度な技術や経験が求められます。
またもう少し上の年代を扱う集中治療室としてPICU(小児集中治療室)もあります。
中規模の病院ですと、NICUが無くPICUでNICUの範囲もカバーしているというところもあります。
対象:NICUほど重篤でない比較的病状が落ち着いている新生児。
扱う疾患:挿管管理が必要でない低出生体重児など、急性期を抜けた状態や慢性疾患。
特徴:NICUなどのような集中治療室ではなく一般病棟扱いになります。NICUで治療を行い、回復のめどが立った患児が移動してくる後方病棟としての役割もあります。
また、それ以外に小児専門病院(こども病院)という病院もあります。
小児専門病院とは未熟児や小児がんなどの、通常の小児病棟では治療が難しい高度な診療に特化した病院です。
施設数は全国に30か所余りとまだ多くありませんが、高度で専門的な医療を行っているので、そこで働く医師や看護師の技術も折り紙付き。
また小児専門病院には先に説明したNICU(PICU)やGCUが併設されていることも多いです。
小児看護のプロフェッショナルを目指すなら、考えてみてもよいかもしれませんね。
「給料は良い?」
給料は他の科とあまり変わりません。
ただ小児科は他の科より残業が多いので、給料もその分上乗せされることになります。
更に稼ぎたい人は夜勤が72時間ルール適応外であるNICUなどに就職すると夜勤に入りまくれるので稼げますよ!(ただし体力が……)
「人間関係は良い?」
人間関係は病院によって様々です。
どの科でも言えることですが、診療科目と職場の人間関係はあまり関係がありません。
子どもを相手にするから優しい人が多くて職場の関係も良好、なんて簡単な話ではありませんね(笑)
強いて言うなら、クリニックの方がスタッフの人数が少ない分、人間関係で悩む人は多いですね。
「ムカつくことある?」
ムカつくこと……多いですよ(笑)
患児も言うことを聞いてくれないし、振り回されてると仕事が全然進まない。
親御さんもピリピリしているし、無茶な要求をしてくることも多いです。
「なんでこんな理不尽な目に」と思うことも数え切れません。
ですが、イライラは外には出してはいけません。
不安で辛いのは患児や親御さんの方ですからね。
イライラした時こそ深呼吸。精神的にも成長できる職場です(笑)
「親はめんどくさい?」
親御さんは強敵揃いです(笑)
しかし小児科は親御さんとのコミュニケーションがとても大事です。
大切なお子さんの体調が悪いんですから、親御さんがナーバスになるのは仕方ありませんよね。
患児の回復には親御さんの協力が必要です。
病状をきちんと伝え、治療方針を理解してもらい、お子さんを支えてもらう。
その為には患児だけでなく親御さんとも信頼関係を築き、よい理解者として接することが大切です。
……ただ、めんどくさいことは多いです(笑)
「メリットは?」
小児科で働くメリットは自身のスキルアップが出来るということです。
また色々な子どもと接するので、子どもの扱い方が上手くなるというメリットもあります。
手ごわい子どもは手ごわいですからね(笑)
「具体的に何が上達するの?」
医療処置の技術は本当に上達しますよ!
例えば注射を一本打つのだって大人相手と体の小さい子ども相手では大違いです。
子どもは体が小さいので扱う器具も小さくなります。
しかもじっとしていてくれる子どもは残念ながら多くありません(笑)
泣くと分かっている子どもに対しどうしたら素早く正確に恐怖感を与えずに処置をするか。
なかなか相当かなり無茶苦茶難易度は高いですが(笑)
その分医療処置の技術はとても上達します。
また、小児科では色々な疾患を診ることになります。
なので様々な病気に対する知識と経験を得ることが出来ます。
これはそれぞれの専門しか扱わない他の科では出来ない経験ですね。
そして子どもは自分の症状を上手く言葉で伝えられません。表情や言動の変化を見逃さず対応することで、患児の観察力も磨かれるでしょう!
「逆にデメリットは?」
メリットでも挙げた医療処置の難しさはそのままデメリットにもなりえます。
器具のサイズが小さいことに加え、子どもは泣いたり、暴れたり……。
更に大人と違い子どもは理性で行動してくれません。頭では分かっていても泣き叫んだり、八つ当たりしたり。
子どもは人生経験も少なく、心も未熟です。
体調が悪くなったことに加え入院など環境が大きく変わり、とても大きなストレスに晒されているのです。
業務的な看護ではなく、子どもの心情を理解し、ストレスを和らげてあげる工夫が必要になります。
そして残念なことに中には完治出来ず、命を落としてしまう子どももいます。
子どもの苦しむ姿に耐え、笑顔で接すること。
苦しむ両親を支えること。
そして死の瞬間にも立ち会わなければならないこと。
これは子ども好きな人ほど辛いことです。
子どもが好きで小児科に就職し、子どもが好きだから辛いと辞めていく人の大半はこの理由です。
また親からの虐待による外傷や栄養障害を見つけることもあります。
その場合も適した行動をしなければいけませんが、やはりこういう時はつらい職業だなと感じます。
「小児科ならではのやりがいはある?」
やはり回復した子どもの笑顔が見れるのは看護師として最高の幸せです。
子どもたちは大人と比べ回復が早いので、数日前までぐったりしていたのにみるみるうちに元気になることもあります。
元気になった姿を見るのは看護師としてとても充実した瞬間です!
疲れも吹っ飛び、あぁこの仕事をしていてよかったなぁって思えますよ!
「子どもが大好きです!そんな私は向いてますか?」
分かりません(笑)
すみませんさすがに乱暴ですね。
やはり子どもが患者さんになるので子ども好きは必須条件になります。
ただ、子どもが好きなあまり感情移入しすぎて辛くなるということもあります。
病院に来る子どもは当然体調が良くありません。ぐったりしていたり、辛そうな顔を見るのはやはり看護師にとっても辛いことです。
子どもが好きというだけでなく、好きだからこそ全力を尽くせる心と体の強さも必要になります。
「逆に子どもが嫌いな私は向いていませんか?」
子どもが嫌いでもやる気さえあれば……!
という意見もありますが、個人的にはやはり子どもが嫌いな方は向いてないと思っています。
看護をしていると大変だなぁとか辛いなぁということは多々あります。どこの科でもあります。
しかしそのたびに「嫌いだから」と子ども相手にイライラしてしまうなんてあってはいけません。(まぁ気持ちはわかりますが)
勿論、誰だって初めてはどう接していいか分からないものです。
一人っ子で小さい子に苦手意識がある人もいるでしょう。
嫌いでなく苦手というのであれば改善は出来ると思いますよ。
「じゃあどういう人が向いてるの?」
やはり第一は子どもが好きな人。
そして泣き叫ぶ子どもや理不尽な文句を言ってくる親御さんにも冷静に愛情を持って対応できる心の強さと忍耐力を持った人。
あと患児の変化を見逃さない観察力がある人が向いています。
とはいえ勿論初めから出来る人なんていません。
何よりも大切なのはそうなりたいという意志とやる気です。
「求人は多い?」
小児科は看護師にとって人気のある職場です。
離職率も低いことから倍率も高く、求人は少ないです。
人気求人であるので求人情報が公開される前に決まってしまったり、非公開求人として扱われることも多いです。
就職希望者は常にアンテナを張って情報収集をするように心がけましょう。
「少子化で将来小児科は無くなってしまうって聞きました!」
無くなるってのは言い過ぎです(笑)
小児科の減少を少子化の煽りとする意見はありますが、一概にそうとは言い切れません。
むしろ小児科の需要は増えているともいえます。
というのも時代の流れから核家族化が進み、経験豊富な祖父母に頼ることが出来ず、不安で小児科に駆け込む親が増えているのです。
また、メディアやネットで気軽に情報を得ることが出来る今の時代、調べるほど不安になってしまうという親も多いです。
なので一概に少子化=小児科が減る!とは言えません。
「じゃあ安心してもよいですか?」
しかしそうとも言い切れないんです(すいません)
小児科は他の科と比べ人員が多く必要であったり設備や技術が求められる反面、点数が稼げず儲からないといわれています。
要は割に合わないといういうことですね。身もふたもないですが。
そういった理由で閉院してしまう病院は確かに多いんです。
その結果残った小児科の負担が増して、激務に耐えきれなくなった医師が辞めていく。これが現状です。
しかし小児科は専門性の高い大切な科です。内科では対応しきれないことも多いです。
子どもたちの未来の為にも、現場で働く私たちの為にも、充実した環境をつくっていきたいものです。
「未経験でも大丈夫?」
基本的には問題ありません。
事実、新卒や小児科未経験で転職してくる看護師はとても多いです!
ただ小児科は扱う疾患が多く、専門性も高いので、入職してから頑張って勉強することは必須です。当然ですね。
未経験の場合は総合病院の小児科のような看護師の数が多く、教育体制が整っている職場をお勧めします。
逆に個人の小児科クリニックなどは即戦力が求められるので未経験だと厳しいかもしれません。
ただ、総合病院に就職をしても小児科の希望が通るとは限りません。
やはり人気があり離職率も低いので、空きが出るまで待つことになる看護師も多いです。
とはいえどこの科でも経験を積むことは出来ます。異動願いを出しておき、修行と思って勤務に励みましょう。
「男性看護師は居る?」
男性の看護師はかなり少ないです。
特にクリニックですとほとんど見たことがありません。
患者さんの中には思春期の女の子もいますし、入院児のおむつ交換も男性スタッフだと嫌がるお母さんもいます。
最近は特に児童ポルノが問題になってきているので不安に感じるご両親も多いでしょう。
また付き添いのお母さんの授乳に対する配慮も必要になります。
実際入職しても、そういった理由で環境に馴染めず辞めてしまう男性看護師は多いですね。男性用の更衣室も無かったりしますし。
ただ、力仕事はやはり男性の方が向いていますし、小児科は意外と体力勝負な面もあります。
付き添いのお父さんの相談相手にもなれるでしょうし、子どもたちから懐かれることも多いです。
実際小児科で活躍されている男性看護師も少なからず居ます!
就職を希望される方は男性だからと諦めずに頑張ってほしいです。
「転職には有利?不利?」
小児科の看護師は非常に幅広い知識と経験が求められます。
小児科で磨いた医療処置の技術や患者さんの観察力は、他の科でも大いに役立ちます。
それは転職の際も大きな武器となるでしょう。
実際知人にも小児科から他の科に転職しバリバリ活躍している看護師はたくさんいます!
「小児科に関係のある資格って何?」
まず挙がるのは日本看護協会の専門看護師と認定看護師ですね。
どちらも非常に取得が困難な資格です。
特に専門看護師は大学院の博士課程を修了していなければならないので更に時間がかかります。
どちらも一度仕事を中断したり、一旦退職したりして学校に通っています。
支援体制が整っている病院も増えてきているので希望者は確認してみるとよいでしょう。
また、それ以外にも
・医療福祉検定協会による「医療環境管理士」
・日本家族計画協会による「思春期保健相談士」
・日本小児臨床アレルギー学会による「小児アレルギーエデュケーター」
・日本静脈経腸栄養学会による「栄養サポートチーム専門療法士」
など小児科でも活かすことが出来る資格は多岐にわたります。
しかし、こういった資格によって大きく給与が上がることはほとんどありません……。
キャリアアップの一環として、また自身のスキルアップの為に向き合うのが適切でしょう。
まとめ
いかがでしたか。
小児科はとても難しく、厳しい世界です。
成人が通う一般内科とは仕事内容も環境も全く異なります。
やりがいも異なれば、小児科特有の辛いこともあります。
「子どもが好きだから」
それはとても大事です。
でもそれだけだと就職し、現実にぶち当たり、大きな挫折を味わうことになります。
「子どもが好きだからこそ、辞める」
小児科の看護師にとってそんな悲しいことはありません。
就職するにも転職するにも、きちんと情報収集をし自分にとって正しい選択をしたいですね。
あなたの未来にこの記事が少しでもお役に立てたら幸いです。
子どもたちの笑顔は、何にも代えられません。
小児科の看護師は最高の職業ですよ!